「無声映画茶飲み話」Vol.01「番場の忠太郎 瞼の母」

ここでは映画の時代背景についてお話ししていきます。

今回は12月4日、札幌市資料館で開催いたしました「第10回無声映画上映会」での上映作品「番場の忠太郎 瞼の母」についてです。

作品

千恵蔵プロダクション作品(65分)

制作/1931年(昭和6年)

原作/長谷川伸 1930年(昭和5年)に書かれた戯曲作品

監督・脚色/稲垣浩 

主演/片岡千恵蔵

あらすじ

幼い頃に生き別れた母を探す、博徒の忠太郎。

やくざとて母の姿を追い求め、旅から旅へ…。

母を訪ね歩き2年が過ぎ、1626年(嘉永2年)柳橋の料理茶屋「水熊」にたどり着く忠太郎。

母との再会を果たした忠太郎のその後の運命は・・・。

時代

江戸時代初期 嘉永元年(1624年)

徳川第三代将軍の徳川家光の治世

初代中村勘三郎が江戸に常設の歌舞伎小屋「猿若座」を建てています
(現在の中央区京橋の付近)

おもな登場人物

番場の忠太郎(主人公 ばんばのちゅうたろう)
・年齢は30歳すぎ 
・旅姿の博徒
・江州(ごうしゅう)番場宿の生まれ
・父は12歳の時に死去
・兄弟なし
・5歳の時に生き別れた母を探し求めている

金町の半次郎 
・旅の途中で忠太郎が知り合った若き博徒
・下総の飯岡で土地の親分を斬りつけ、追われているところを忠太郎に助けられる
・その後、実家のある武蔵国南葛飾郡へ逃れる

おとら
・50過ぎの老婆
・夜鷹
・若いころはおはまと仲がよかったが、今では邪魔者扱い

おはま
・柳橋にある料理茶屋「水熊」の女主人
・忠太郎とお登世の母

お登世(おとせ)
・おはまの娘
・18〜9歳

出てくる地名

江州番場宿(ごうしゅう ばんばのしゅく)
・忠太郎が生まれたところ
・現在の滋賀県前原市
・鎌倉時代(1200年代〜)からの宿場であり、現在も軒並みが多少残っています

木曽海道六十九次 番場 歌川広重画

下総の飯岡(しもうさのいいおか)
・現在の千葉県北部、銚子市に隣接する旭市のあたり

武蔵国の葛飾郡金町(むさしのくに かつしかぐん かなまち) 
・半次郎の実家
・現在の東京、埼玉、千葉、茨城に渡る広範囲の地域。

柳橋(やまぎばし)
・江戸時代からある台東区の花街
・現在のJR浅草橋問屋街のあたりです

金町〜柳橋
・金町は同じ江戸ながらも中央部へ出るにはいくつもの大きな川を越さなければなりませんでした。半次郎と別れた忠太郎がここから江戸の中央へ向かうにはかなりな道のりであったと思います。
現在は京成線から都営浅草線経由でわずか30分程度ですので、風情も何もないですね〜!

聞き慣れない言葉

博徒(ばくと)
・博打打ち。賭博を生業としているものたち。

夜鷹(よたか)
・遊女の中でも最下層の位置にいるものたちのことです。
・江戸時代、おもに屋外で性的な営みをすることを生業としていました。
・代金の相場は24文程度。

糊売り(のりうり)
・江戸時代、糊を入れた桶を担いで売り歩く仕事。
・糊はお米、麦などのでんぷん糊が日常使われていました。
・糊は洗ったあとの着物の糊付けや障子の張替えのときに使われました。

お金の単位
・今は10進法ですが、江戸時代は4進法でした。
・1両=4分=16朱=4000文

お金の価値は物や人件費(職種)、時代などで異なっていますので、一概に1両がいくらかとは決められません。
今回は、江戸時代初期の米価を参考にしてみました。

1両:100,000円
1分:25,000円
1朱:6,250円
1文:25円

映画の中でお金が出てくるシーン
・江戸のとある町で盲の三味線弾きに渡した金額が1朱:6,250円
・おとらに渡した金額が1両:10万円
・夜鷹が体を売って得られる金額が24文:600円
・忠太郎がもし再会できたとき母親が苦労していたらと貯めていた金額が100両:1000万円

原作と映画の違い

忠太郎が浪人や無頼のものとの斬り合いを終えてからのラストシーンで違いがあります。

長谷川伸の原作では忠太郎と母との再会はありません。

映画の方では、「ラストではぜひ親子を再会させたい!」という監督自身の切なる思いがありました。

そのことを伝えに長谷川伸宅へ赴いて直談判、ようやく書き換えの許可をもらったということです。

ですので、映画の方は無事に親子として再会を果たします。

原作の「母親に会いたいけれど、会わずに去っていく」という男の”やせ我慢”もカッコが良いなぁと思いますが、わたしとしては親子としての再会を果たす映画のラストシーンの方が好みですね〜!